寒い日に思い出す友人の温もり。 #ピザが食べたい

12月の寒い朝
四畳半、四角い部屋の隅で
膝を抱えて、SNSに呟いた。

「どれだけ会社の売上に貢献し、上司に褒められても
どれだけ友人に恵まれ、恋人がいたって
冬のひとりの時間というのは暖房と反比例するように寒いね。」

いいねの数とは裏腹にコメントはこない。
タイムラインに埋もれて行く呟きが、

降り積もる雪で隠れるアスファルトのように冷めて行く。

「息が白いなぁ」

なんてそれは当たり前な事をひとり呟いて我に返る。
「珈琲でも飲んで今日も頑張ろう」

 


そんな平日は瞬く間に過ぎ去り、
ようやく待った週末。
恋人からのメールを待ちながら歩く帰り道。

「缶ビールでも飲んで今日は眠ろう」

そう思いながらいつものコンビニに寄る。
いつからだろう、寝る前の缶ビールが2本になったのは。


家に着いて1本目の缶ビールが半分になった頃、
突然インターホンが鳴った。
そういえば今日は恋人からの着信がないなぁとふと思いながら覗き穴を覗く。

曇ってて顔は見えないが3人の人影が見えた。


恐る恐るドアを開ける。
そこには恋人と共通の友人達の姿が。

「やぁやぁ。センチメンタルな君の為に騒ぎに来てあげたよ!!」

「「「 おじゃましまーす!! 」」」

「・・・おう。」

散らかった荷物を退けて、
狭い部屋に文字通りぎゅうぎゅう詰めで座る友人、恋人、僕。
こたつの4辺にぴったり収まる。
そして広げられるLサイズのピザ、ピザ、ピザ。

(こんなに食べられないぞ)

やれやれと思いながらも恋人の心配しながらも向けられる笑顔に、
少しずつ心が解かされて行くのが解った。

温かいピザを一切れ頬張るごとにあふれた涙を拭ってくれる恋人と、
笑い飛ばしてくれる友人。

僕は本当に良い仲間を持った。
幸福感と満腹感と、缶ビールのアルコールで温かくなったまま眠りについた。
僕は本当に本当に幸せだ。

 

 



・・・あれから何年が経ったのだろう。
長引く入院生活も終わりが見えてきた。

あの頃の友人も、妻になった恋人も
既にこの世に無く。

私ももう、長くない。

しわくちゃになった手のひらでスマートフォンとやらを操作し、
Lサイズのピザを注文する。
全く便利な時代になったものだ。

「もうすぐまた、4人でピザが食べれるなぁ。」

あふれる涙を笑い飛ばしてくれる友人も、
拭ってくれる恋人ももういない。

それでもいい。

もうすぐ会えるのだから。

私はまた、

 

あの時の、

 


ピザが食べたい。